ヘックスバー(トラップバー)の効果的な使い方と特徴について解説させていただきます。
ストレングスアジア公式アンバサダーを務めさせて頂いている栗原弘教です。
前回のセーフティスクワットバーの記事に続き、今回はヘックスバー(別名:トラップバー)の特徴や効果的な使用方法について説明して行きたいと思います。
既にご購入をされているトレーニー、コーチ、トレーナーの方は、目的に合わせて効果的な種目を取り入れて頂ければと思います。ご購入がまだの方は、購入後にどんな事に使用できるのかをご参考にして頂きご検討頂けますと幸いです。
<目次>
・ヘックスバーの特徴
・ヘックスバーのおすすめ種目
− ヘックスバーデッドリフト①(ハイグリップ)
− ヘックスバーデッドリフト②(ローグリップ)
− ルーマニアンデッドリフト
− ペンドレイロウ
− オーバーヘッドプレス
・まとめ
ヘックスバー(トラップバー)の特徴

ヘックスバー(別名:トラップバー)は上の写真の様な六角形をしたバーベルの事を指します。この六角形の中央の間に入り様々なトレーニングを行う形をとります。
1番の特徴は何と言っても通常はバーベルがある位置に身体が収まるという事です。
通常のオリンピックバーベルであれば、グリップを握り持ち上げると身体の中心軸(横から観た時の)よりも前にバーベルが来ます。
この事により、各種トレーニングフォームを適切に行えないという方も多いです。
特にトレーニング初級者〜中級者のデッドリフトやルーマニアンデッドリフト等では前重心になり過ぎていたり、腰部が過度に丸まってしまったりと、やや危険なフォームで行っているケースも多く見かけます。
ヘックスバーの場合は、よりバーの中心軸と身体の中心軸が近い状態を自然に作り出せる事で腰部への負担が大幅に軽減します。
また、グリップもナチュラルグリップで握れるので、肩が前に巻き込まれる様なフォーム(猫背の様な姿勢)のミスを軽減してくれます。加えて、デッドリフトやベントーバーロウなどで広背筋の収縮や固定感をとても感じやすくなる事も大きなメリットであると言えます。
初級者〜中級者の場合、デッドリフトを始めとする背中の種目を苦手にしている方や腰や肩などの痛みから敬遠しているケースも多く見られますが、ヘックスバーであればそれらの問題をクリアできる事も多いので、特におすすめです。
ヘックスバーは、グリップ位置がハイグリップとローグリップで2つあります。
ヘックスバーは様々な種目が行えるので、各種目で使い分けが出来るのですが主な特徴は下記の様になります。
ハイグリップ
- 可動域をやや短くし、フォームを作りやすくする。
- より高重量高強度のトレーニングが可能。
ローグリップ
- フルレンジでの動作になる。
- 上昇局面(=収縮局面)、下降局面(=伸展局面)双方に負荷が強くかけられる。
また、ハイグリップ、ローグリップどちらにも当てはまりますが、グリップ幅がややワイドグリップになるので菱形筋や僧帽筋中部といった肩甲骨の間にある筋肉を刺激できる事も大きなメリットになります。
肩甲骨を内側に閉めたり胸椎の伸展動作に関与するので、多くの人に必要な部位を鍛える事に繋がります。
ヘックスバー(トラップバー)の使い方、おすすめ種目
ヘックスバーデッドリフト①(ハイグリップ)

ヘックスバーを使用したトレーニングの中でも一番ポピュラーで、おすすめのものになります。
普段腰の負担が怖くてデッドリフトがなかなか出来ない人や、上手くフォームが作れない人はヘックスバーデッドリフトを行う事を強くおすすめします。
ヘックスバーはその独特の形状から腰に掛る負担が通常のオリンピックバーベルに比べて低くなります。(※勿論全くないという訳ではありません。)
そして、各種競技アスリートのトレーニングとしてもおすすめです。
最近では、ラグビー日本代表の選手がW杯中のトレーニング使用していた事でも注目されていました。
試合期間中や練習で身体を酷使しながらウエイトトレーニングも行うアスリートは、如何に疲労をため込まないか、特に局所的にダメージを残し過ぎないかという事は重要です。
デッドリフトは、スクワットに並んでキングオブエクササイズの筆頭に挙げられる種目ですが、スクワットに比べて高重量を扱えるというメリットに加え、腰部に強い疲労が出るというデメリットもあります。
ダメージも大きい事から回復に時間が掛るので、アスリートのトレーニングでは頻度、強度などをしっかりと計算し、コントロールしなければ競技パフォーマンスや試合での動作に悪影響を及ぼす事も考えられます。
一方で、ヘックスバーデッドリフトであれば、高重量を扱えて腰部の負担は比較的抑えられるといいとこ取りが出来るので、とても効果的であると言えます。
※オフシーズンなどで、腰部の既往歴などがなければバーベルデッドリフトをしっかりとやり込む事は身体作り、怪我の予防としてもとても大切です。

さて、ハイグリップでのやり方ですが、写真の様にバーの中心軸上に足を置き、グリップの真ん中を握ります。グリップ位置が前後にズレると不安定になるので注意しましょう。
この時の姿勢としては、足趾を軽く浮かせやや踵よりに重心を置きながらお尻を突き出し、背中を真っ直ぐに保ちます。母趾球、小趾球は浮いてはいけませんし、あくまでも踏む力の方向は垂直を意識しましょう。
ハムストリングスに適度なストレッチ感を感じられる程度に、お尻を引き上げながら前傾姿勢を作りグリップを握る様にします。

引き上げる時は、一度肩を後ろに引き(=胸を開く)広背筋を収縮させ、その状態をキープしながら足を踏み込み引き上げて行きます。

下ろす時は、挙上時のルートを戻る様に意識してゆっくりコントロールして行いましょう。
今回のやり方は股関節を中心としてハムストリングスや背中をメインに鍛えるフォームです。上体をより垂直に近い状態までお越し、膝関節を中心に上下させるフォームでは大腿四頭筋をメインで鍛える事が可能です。
ヘックスバーデッドリフト②(ローグリップ)

ローグリップでのデッドリフトは上の写真の様にヘックスバーをセットします。
フォーム自体はハイグリップでご説明した内容と同様ですが、グリップの高さが大きく変わるので、しっかりと肩を後ろに引き続き胸を張る事で腰や背中の過度な丸まりを抑制させましょう。


骨格差にもよりますが、ハイグリップの時よりも膝関節の屈伸動作が強くなりますので、大腿四頭筋に強く刺激を入れたい場合などは、ローグリップで行うと良いかと思います。


ルーマニアンデッドリフト

直立姿勢から肩を後ろに引き、胸を張り広背筋を収縮させた状態で固定します。

その状態から股関節を中心にお尻を後ろに突き出しながら前傾姿勢を作ります。
この時、お尻を天井に突き上げる意識を強く待ち続け、ハムストリングスに強いストレッチ感を感じられれば上手く出来ています。
腰椎〜骨盤が丸くなってしまったり、股関節や骨盤の前傾動作ではなく腰椎伸展がメインになってしまうと、腰部に強い疲労感や痛みを感じますので、どこから動かすかというイメージはとても重要になります。
ヘックスバーでのルーマニアンデッドリフトは、ナチュラルグリップである事とバーが前に流れにくい事から、広背筋を始めとする背部の筋群を収縮させた状態で動作を行える点で通常のバーベルよりもフォームを作りやすいというメリットがあります。
ペンドレイロウ

ペンドレイロウは、広背筋を鍛えるのにとても適した種目です。
ベントオーバーロウをよりキツくした種目、と言うとイメージし易いかもしれません。
ペンドレイロウは、股関節を中心にできるだけ前傾姿勢をとった姿勢でローイング動作を行います。広背筋に強く刺激が入る事から、ボディビルダーなどが好んで行うケースが多いかと思います。私はパワーリフターですが、パワーリフティングにおいても広背筋はとても重要な筋肉になるので、ペンドレイロウは好んで行っている種目です。
ヘックスバーで行う場合は、ハイグリップであれば前傾角度をやや抑えて出来ます。ハムストリングスが硬くて深く上体を倒せないという方向けです。
ローグリップであれば、前傾角度が大きくなるので、より広背筋には強い負荷が掛る事になります。
また、ペンドレイロウの場合、ローイング動作前に一度肩甲骨を下げる下制という動作を行い、広背筋や僧帽筋中部、下部を固定するのですが、ヘックスバーはナチュラルグリップである事からその動作をスムーズにできるようにしてくれます。
この予備動作は、通常のデッドリフトを行う時にも必須の動作なので、動作を覚える事や関連筋群を強化する事にも繋がるので非常におすすめです。
※上の写真はニュートラル、下の写真は予備動作後。少しわかりにくいですがぜひ比べて見てください。


ヘックスバーペンドレイロウの場合は、前にバーが流れにくい事とより身体に近い位置で引く事もできるので、広背筋下部にも効かせ易いのもメリットの一つかと思います。
オーバーヘッドプレス

ラックのJカップの形状によってはバーを乗せる事が出来ないので、その場合は写真の様にセーフティーの上からスタートさせると良いです。


バーの中心軸上に入り、グリップをしっかり握り、プレス動作を行います。

ヘックスバーでオーバーヘッドプレスを行うメリットは、
- ナチュラルグリップなので肩肘手首の負担が少なく、動作もスムーズに行える。
- 中間にバーベルがないので、オーバーヘッドポジションが取り易い。
- 中間にバーベルがないので、頭部や顔面にバーベルが当たるリスクがない。
- バーの前後への動きを制する為に体幹部の安定性が向上する。
などといった事が挙げられます。
立位でのオーバーヘッドプレス動作は、地面からの力を体幹部を固定させながら上肢、バーベルへと伝達させるといった要素を持つとても優れたトレーニングなので、ぜひ多くの方に取り入れて頂きたいと思います。
※セーフティスクワットバー、スイスマルチグリップバー、ヘックスバーなどの特殊バーは、スリーブの直径が1.9インチと通常のオリンピックバーと比べて若干細くなっているため、クリップ式の50mm用のカラーでは固定できません。こちらのストロングマンカラーもしくは市販のねじ式カラーを購入することをお勧めします。
まとめ
いかがだったでしょうか?
ヘックスバー(トラップバー)はまだ比較的珍しい物になりますが、ラグビー日本代表の選手がトレーニングに使用していたり、その他のプロ選手なども積極的にトレーニングに取り入れる様になっています。
用途や強度を適切にコントロールしていけば、大変効果的で安全にトレーニングをする事が可能になるので、施設で見かけたら積極的に使ってみる事をおすすめします。
ホームジムやスポーツ施設運営者の方も汎用性の高さ、効果の高さ、新規性の高さという観点からもとてもおすすめです。
今回の記事が皆様のトレーニングのお役に立てていれば幸いです。
最後までお読み頂きましてありがとうございました。
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